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大変遅くなりましたが、キリ番12121のときに頂いたリクエストが書けました…! 露翠様、大変お待たせしてしまい申し訳ございませんでした! つかさができる精一杯の「甘い双花」ですが、あまりリクエストに沿えてないような気がひしひしとしております…。 重ね重ね、本当にすみません! 『はじめの一歩』 「絳攸?」 問われてはっとした。 何をしているんだ俺は! 自問しても、徹夜続きの頭はうまく回らず、彼に適切な答えを与えることはなかった。 くされ縁の友人の袖を思わず掴んだまま、絳攸はただぽかんと楸瑛を見上げた。 ***** それじゃあね。 楸瑛は席を立った。絳攸は最近、連日の徹夜だ。確認したわけではないが、きっと今日もそうだろうと思った。 いつもなら、ああとかふんとか早く出てけとか、一応聞いてますよというだけの、かなりおざなりな声が返ってくるのだが、今日はそれがない。代わりに、袖をくいと引かれた。 「ん?どうかした?」 「…え?」 問われてはじめて気付いたように、絳攸は自分の手を見て、次いで楸瑛の顔を見上げた。 「絳攸?」 薄墨色の瞳が、戸惑ったように見開かれる。 楸瑛はなんとなく、ああ、と察した。 掴まれた袖とは反対側の手で、絳攸の手を袖から離す。少し墨で染まった指先が、ぴくりとこわばるのがわかった。 努めて明るい声を楸瑛は作る。ここは慎重にならなければ、今までの関係すら壊れてしまうと思った。 絳攸の手を左右にぶんぶんと振り、楸瑛はにっこりわらってみせる。いつものような顔で。 「仕事、今日も徹夜?」 「…いや、今日の分はこれで最後だ」 絳攸は書き途中の書類に目を落とす。そうすることで、無意識にこの思いがけない状況から逃れようとしているようだった。 けれど、手を振り払うことに思いいたらないのは、何か意味があるのかと、楸瑛は期待する自分に内心微苦笑した。 「ふぅん」 手を離したくはなかった。離したら、また今までと同じ関係を惰性のように続けるだけだ。居心地は良いけれど、それでは物足りなくなっているのもまた事実だった。 「じゃあ待ってるよ。終わったら私の邸に来ないか?以前君が読みたいと言っていた書物をこのあいだ入手したんだ」 「…それなら行く。すぐ片付ける」 それを聞いてから、楸瑛は静かに絳攸の手を解放した。ぎくしゃくと離れていく指先が、ひどく愛しかった。 ***** 通された楸瑛の部屋には、食事と酒が用意されていた。 お互いに細心の注意を払って、他愛ない会話をする。今までの関係を壊さないように、けれどもこのままではいられないような焦燥が、胸の奥でくすぶっている。 はあ、と絳攸はひとつ息を吐いた。 眠かった。そして、そろそろそんな攻防に疲れてきた。何しろいつからか覚えていないほど、徹夜続きだったのだ。微かに頭痛もして、うまく頭が働いていない気がする。 もう帰ろうと絳攸は思った。限界だ。酒も回ったからか、眠くて体が重くて仕方ない。 どうしてこうなるまで、本を寄越せと言わなかったのだろうと、ぼんやり疑問を感じながら、絳攸は口を開きかけた。 「そろそろ…」 「あ、絳攸、顔に何か」 遮るように、楸瑛は絳攸の顔を覗き込んだ。 「え?どこだ?」 「私が取るよ。…目を閉じて」 「…!」 近づく指先と顔と、香の薫りと、柔らかな声に、絳攸は言われるまでもなく反射的に目を閉じる。 眼窩をなぞるように瞼に触れられて、くすぐったいような感覚と、喉元で感じる込みあげてくるような鼓動に、その手を払い除けたくなる。 「…まだ、か」 「ん、…もう少し」 瞼から、頬へとかすめるように触れられる。それが耳朶まで辿り着いたとき、思わず絳攸はびくりと肩をすくませた。 「…っなんだ!?」 目を開いて睨みつけるも、真っ直ぐに自分を見つめる瞳にかち合って、慌てて絳攸は目を伏せた。 そんな目で見るなと思う。何でそんなに熱いのだと。 「絳攸」 「…なんだ常春」 目を合わせられないまま、いつものように憎まれ口を叩く。普段なら、これで笑って離れていってくれるのだ。 期待通り、くすっと笑う声がしたが、耳元で聞こえることに、近すぎやしないかと焦る。 そのうえ、離れてもくれなかった。耳から、首の後ろへ手が伸ばされるのが分かる。 「…楸瑛!いい加減に…」 やっと出した声が明らかに上擦っいることに、何だか戦意を喪失して、絳攸は口をつぐんだ。 何が何やら、もう訳が分からなくなっていると、結っていたはずの髪がぱさりと肩に落ちてきた。 ***** まだ帰したくはなくて、苦しい理由をつけて暇乞いを遮った。 瞼に触れると、少し体を固くしたのが、たまらなく可愛く思えて。いつの間にか指が勝手に動いていた。 制止する声に、やっと我に返る。 今までの慎重さは一体どこへ行ったのだろうかと、少し笑った。 それでも、まだ引き留めていたくて、楸瑛は絳攸の髪紐をほどいた。 柔らかな銀の髪が、さらりと流れる。 疲れた顔の絳攸に、ちくりと罪悪感を感じながらも、楸瑛はにこりと笑った。 「ごめん」 「…何が、というかどれが、だ?」 「髪の毛ほどけちゃったことかな」 「……ほどけた、だと?」 「そう」 楸瑛は、名残惜しさに負けそうになりながら、えいやっと絳攸から体を一旦離した。そのままあぐらをかく絳攸の背に回る。 「髪、直すから」 指先で、結癖の付いた髪をくしけずる。優しく、ゆっくりと。 「そういえば、書物まだだったね」 「…ああ」 「言ってくれれば、すぐ出したのに」 そうして欲しくは全然なかったけれど、すぐ帰ろうとしなかったのは、楸瑛の期待通りの理由なのだろうか。 「ああ、そうすれば良かった」 「…あはは」 果たして今後彼は、また部屋に上がってくれるのだろうかとちらりと考えて、楸瑛は乾いた笑い声を立てた。 「…眠い!」 「それは本当、すまない」 彼の事を思えば、一秒でも早く寝かせてやるべきだった。 楸瑛が自らの行状を反省していると、絳攸の体が傾いだ。 楸瑛へと倒れてくる絳攸を両腕で抱きとめる。 「…絳攸?」 「俺は寝る!もう限界だ、泊めろ」 「それは、構わないけど…」 返事の途中で、寝息が聞こえてきた。 「えーと…」 これは彼なりの甘えなのか、それとも寝不足故の不思議行動なのか、些か判断に迷いつつも、楸瑛は絳攸を横たわらせた。 久々の睡眠は深く彼を捕えたようで、目を覚ます気配はない。 寝台へ運ぶのは骨が折れそうなので、掛けるものだけを運んで来て、ふと思い立ってその隣に横になった。 「君の寝顔は、猫みたいだよね」 なかなか懐いてくれないけれど、もしかしたら少しばかり距離が縮まった気がする。 とりあえず、今日のところはそれでいいなと、楸瑛はひとつため息をついて目を閉じた。 隣で熟睡する人から、ふわりと墨の香りがする。その距離に今は感謝しようと思いながら。 (終) |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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遅くなりました〜小説楽しみに待ってました〜無意識のでれっ?縋る絳攸可愛いです、絶賛片思い中の楸瑛ですね(〃∇〃)じりじりと追い詰められつつありますね常春さん、しかも自身の深層心理に(笑)ほろ甘な感じがたまりませんvv |
露翠 2008/08/02 22:42 |
>露翠さん |
つかさ 2008/08/02 23:07 |