GINGER

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 通り雨

<<   作成日時 : 2008/05/10 17:59   >>

トラックバック 0 / コメント 0



ご無沙汰しております!いかがお過ごしですか?
今回は、コウの話です。新刊(『黎明に琥珀はきらめく』)を微妙にネタバレしてます。まだ読んでいらっしゃらない方はお気を付けてくださいo(^-^)o


『通り雨』

自分の摺っている墨の匂いに交じって、微かに雨の匂いがすることにコウは気付いた。
雨が近づいているらしい。
ユリノキを中に入れなくちゃと、コウは机を離れ、ウロウロとさ迷いながらやっとの思いで中庭へ出た。
ポツポツと、地面に小さな染みが、点々とつきはじめている。
コウは慌ててユリノキの鉢を抱えて、そうしてふと、空を見上げた。

―まっていてね。

誰かにそう言われた気がして、いや、いつか誰かにそう言ってもらえた気がして、その声を、記憶を追うように探すように、空を視線が辿る。

―かぜをひいてしまうから、ぬれないように、まっていてね。

うん、とコウは微かに頷き、ユリノキを大事に抱えて、またウロウロと部屋を目指した。
「あんまり雨に当たると、ユリノキも弱っちゃうよね。れいしん様の大切な木なんだから、ぼく、絶対に大事にするよ」
雨から袖で木をかばって、コウはユリノキに囁きかける。植物に話しかけるとよく育つらしいと聞いてからは、こっそり話しかけるようにしているのだ。

あなたも、ずっと、わたしたちのたいせつなこども。

明るい曇り空に、微かに鳥の羽音がした。

(終)

設定テーマ

注目テーマ 一覧

月別リンク

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文